大谷石採取場跡地の陥没に伴う野外AE現象


 
 

4.陥没のメカニズム

 大谷石を採取した跡地である大きな地下空洞が破壊し陥没するメカニズムに対する研究は、徐々に進んではいるが(例えば三室他1992、横山他1992)、残念ながら完全に解明されたわけではない。

 図−4は現在考えられている陥没の2種類の仮説を模式化した図であるが、その一つは天盤を支える残柱がまず破壊するという残柱説、他の一つは天盤がまず崩落するという落盤説(写真−5、写真−6)である。

1)残柱説
 地表から天盤までの深さ(土被り)が大きい場合は、残柱には大きな荷重(応力)が働く結果、残柱の4つの角の部分と残柱の中心の壁の部分から小さな破壊が始まる。 破壊の進行により、荷重は残柱のより強度の高い中心部分へと転移するが、転移荷重が大きすぎたり岩盤強度が不足している場合には、岩盤強度/応力の比が1.0以下となり、残柱全体の崩壊が発生する。

 残柱は複数でまとまって天盤を支えているため、以上のような理由で一本の残柱が崩壊すると、荷重は他の健全な残柱に転移することになり、強度/応力比は急激に減少し、条件が悪い場合では周辺の残柱が次々に崩壊する、ドミノ効果と呼ばれる現象が発生し、大きな面積が陥没することがある。

2)落盤説
 地下空洞の天盤は土被りによる荷重(自重)によって、空洞方向に曲がろうとするが、岩盤がほぼ水平に成層していたり、不連続部分がほぼ水平に分布している場合には、岩盤内部に亀裂が発生し破壊が発生する場合がある。

 写真−5は露天採取方式の跡地に発生したアーチ状の岩盤亀裂であり、写真−6は亀裂が進行した結果発生したアーチ状の落盤の状況である。

 こうした落盤は隣接する残柱や壁の間に、力学的に安定なアーチが形成されるまで持続するが、アーチが巨大になって頂上部が軟弱層に進入した場合に陥没が発生する。 ただし、現実の陥没の範囲は残柱の間隔よりも極めて大きいという特徴があり、この落盤説ではこの大きな陥没面積を十分に説明できない部分がある。
 

図-4 陥没のメカニズム(仮設)

写真-5 露天採取場跡地の天盤に形成されたアーチ状の亀裂

写真-6 露天採取場跡地のアーチ状の落盤