2)発生頻度、累積頻度、活動指数
発生頻度、累積頻度の集計は、時間的に最も速く検出した観測点だけで集計する方法で行っている。 通常は日別の集計であるが、緊急時には1時間別の集計も行っている。
発生頻度は単なる野外AEの発生数であって、発生した野外AEのエネルギーを直接現している値ではない。 このため下記式で求められる「活動指数」を計算で求めて使用している。
活動指数 = Σ(Amp×Time)
(1)
ここで、(Amp) と(Time)は、野外AE1個の最大振幅と継続時間であって、集計を任意の時間単位で行うが、通常は日別で集計する。
3)発生位置の推定計算
大谷石採取場跡地周辺で発生する野外AEのうち、岩石の崩落によって発生する野外AEの波形は、P波とS波の区分が極めて困難という特徴がある。それは、1回の崩落でもその落下位置が微妙に変化していること、床が水没していたり過去の崩落物が堆積しているために床面は不均質であること、波形の伝播経路は地下空洞によって複雑になっているために、波形が干渉や回折を受けていることなどであると考えている。
従って、P波・S波の到着時間差法が使用できないために、複数の観測点で検出した波形のP波到着時間差を利用し、インバージョン処理を行って位置を推定している(中田、1992)。
4)アボイドマップ(ハザードマップ)
大谷石採取場跡地の最終破壊は陥没であるが、前兆現象の発生場所と陥没場所は一致するものと考えて、アボイドマップの作成による危険地域の表現を行っている。まず、野外AEのエネルギーを下記式に従って計算する。
0.85M' - 0.35 = log(Av) + 1.73×log(r) (2)
ここでr(m)は発生位置までの距離、Av(kine)は最大速度振幅である。(2)式は、微小地震のマグニチュードを計算する渡辺の式を、大谷地区の地域性を考慮して変形したものであるために、自然地震のマグニチュードとは異なっている。
計算区域を100mのメッシュに分割する。発生位置からメッシュ区分を求め、必要な期間について集計した地図がアボイドマップである。 このアボイドマップは、発生位置の計算上の誤差や、発生位置の微妙な変化を100m間隔のメッシュにまとめて表現していると考えられたい。
5)データベースの運用
観測システムは、複数の場所での使用を前提に作成されており、データをコピーすることによって、複数の専門家が分散してデータを検討できる。なお、本データベースは観測所の他に4ヶ所で稼働中である。
|